1ヶ月単位の変形労働時間制について解説します。
目次
1ヶ月単位の変形労働時間制とは
1ヶ月単位の変形労働時間制とは、1ヶ月以内の期間(変形期間という)を平均して1週間あたりの労働時間が40時間(31日の月であれば、上限時間は177時間6分)を超えなければ、労働時間が1日8時間、週に40時間を超えて働かせることができる制度です。
1ヶ月の中で月末月初が繁忙期になる業種や、隔週で土曜日の勤務する必要があり、より多くの労働日が必要な業種などで採用されることが多いです。なお、1ヶ月の上限時間の範囲内であれば、1日や1週間の上限は設けられていません。ただし、前月までにあらかじめ労働日とその労働日における労働時間を特定しておく必要があります。
また、特定された労働日における労働時間が8時間(たとえば10時間)を超えている場合は、10時間を超えたところから、残業時間として取り扱い、割増賃金の支払いが必要になります。
特定の業種(特例措置対象事業場)で常時10人未満の従業員を雇用している事業所の場合は、週平均労働時間が44時間を超えない範囲で労働時間を設定できます。
引用:労働基準法第32条の2|e-Gov法令検索(外部サイト)
1ヶ月単位の変形労働時間制の採用要件
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する場合には、労使協定又は就業規則その他これに準ずるものにより、以下の内容を具体的に定める必要があります。なお、締結した労使協定や作成・変更した就業規則は、所轄労働基準監督署に届け出が必要です。
1. 対象労働者の範囲
対象労働者の範囲は、一部の除外対象(年少者、妊産婦が請求した場合)を除き、自由に定めることができます。そのため、月末月初が繁忙期になる部署にだけ変形労働制を適用したり、育児や介護の必要がある従業員を除くということも可能です。
補足
年少者(労働基準法における年少者は満18歳未満の者を指す)については、原則として1ヶ月単位の変形労働時間制で労働させることは出来ません。(ただし、1週48時間、1日8時間以内であれば労働させることは可能です。)また、妊産婦が請求した場合には1週40時間、1日8時間の範囲内でしか労働させることはできないため、1ヶ月単位の変形労働時間制で労働させることはできません。
2. 対象期間及び起算日
例えば「毎月1日を起算日とし、1ヶ月を平均して1週間当たり40時間以内とする」というように、対象期間および起算日を明確に定める必要があります。なお、対象期間は1ヶ月以内に限ります。
3. 労働日および労働日ごとの労働時間の特定
対象期間すべての労働日および労働日ごとの労働時間を、シフト表や会社のカレンダーなどで具体的に定める必要があります。このとき、対象期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えないように設定します。設定したシフトは起算日より前に対象者に通知し、通知後は原則として変更できません。
補足
会社が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような運用は、変形労働時間制の要件を満たしません。
4. 労使協定の有効期間
労使協定を定める場合、労使協定そのものの有効期間は対象期間より⻑い期間とする必要があります。
【1ヶ月単位の変形労働時間制に関する協定届】
出典:1箇月単位の変形労働時間制に関する協定届|厚生労働省(外部サイト)
【1ヶ月単位の変形労働時間制に関する労使協定】
出典:1箇月単位の変形労働時間制に関する労使協定書|厚生労働省(外部サイト)
1ヶ月単位の変形労働時間制における月の上限時間
1ヶ月単位の変形労働時間制における労働時間の上限は、1週間当たりの平均労働時間が40時間(特例措置対象事業場は44時間)を超えない範囲内とすることが必要です。対象期間中の労働時間の上限は、以下の計算式で求めます。
<上限時間の計算式>
上限時間=1週間の法定労働時間(原則40時間※)× 対象期間の暦日数÷ 7日
※特例措置対象事業場は44時間で計算します。
引用:1ヶ月単位の変形労働時間制|厚生労働省(外部サイト)
1ヶ月単位の変形労働時間制における時間外労働
1ヶ⽉単位の変形労働時間制を採⽤した場合、以下のとおり「日」→「週」→「月」の順に時間外労働を確認していきます。
1. 日ごとの時間外労働
1日のスケジュールが法定労働時間(8時間)未満、実働も8時間未満の場合
スケジュール時間(6時間)を超え法定労働時間(8時間)までの時間について125%の割増賃金の支払は不要ですが、100%の賃金の支払いは必要です。
1日のスケジュールが法定労働時間(8時間)未満、実労働が8時間を超えた場合
スケジュール時間(6時間)を超え法定労働時間(8時間)までの時間について100%の賃金の支払い、法定労働時間(8時間)を超えて勤務した時間について125%の支払いが必要がです。
1日のスケジュールが法定労働時間(8時間)以上の場合
1日のスケジュール時間(9時間)を超えて勤務した時間について125%の支払いが必要です。
2. 週ごとの時間外労働
週のスケジュール時間が基準時間(40時間)未満、実働も40時間未満の場合
スケジュール時間(36時間)を超え基準時間(40時間)までの時間について125%の割増賃金の支払は不要ですが、100%の賃金の支払いは必要です。
週のスケジュール時間が基準時間(40時間)未満、実働が40時間超過した場合
スケジュール時間(36時間)を超え基準時間(40時間)までの時間について100%の賃金の支払い、基準時間(40時間)を超えて勤務した時間について125%の支払いが必要です。
※1日について、すでに時間外として計上している分は重複となるため除きます。
週のスケジュール時間が基準時間(40時間)以上の場合
スケジュール時間(42時間)を超えた勤務した時間について125%の支払いが必要です。
※1日について、すでに時間外として計上している分は重複となるため除きます。
3. 月の時間外労働(暦日数30日の月の場合)
月の所定労働時間(168時間)を超え法定労働時間の総枠(171時間24分)までの時間について100%の賃金の支払い、法定労働時間の総枠(171時間24分)を超えて勤務した時間について125%の支払いが必要がです。
※1日及び1週間について、すでに時間外として計上している分は重複となるため除きます。