「許容時間」とは、当月・年間であとどれくらい時間外労働が許されるのかを、設定した基準時間を元に算出した時間数です。「許容時間」の算出方法と算出例を解説します。
目次
当月の許容時間の算出方法
当月の許容時間は基本的に【月の時間外労働の上限値】をもとに算出します。ただし、特別条項を設定しているか否かや、年間の時間外労働の残時間数により、どの値を参照して算出するかが変動します。
補足
一般条項 / 特別条項は、以下の画面で設定します(詳細はこちら)。
メニューバー「環境設定」 > 「基準値設定」
前提:年間の時間外労働の残時間数
年間で許されている時間外労働の残時間数です。以下の式で計算します。
年間の時間外労働の残時間数 = 年の時間外労働の上限時間数 - 法定休日労働を含まない時間外労働の合計
一般条項と特別条項を設定している場合
特別条項の発動回数が「発動回数」項目の設定値に達しているか否かで、参照する値が異なります。
「発動回数」の設定値に達していない
例えば「発動回数:6回」と設定し、年間の特別条項の発動回数が1~5回の場合です。
特別条項の【月の時間外労働の上限値】を参照し、【年間の時間外労働の残時間数】と比較します。
ケース1:【年間の時間外労働の残時間数】 ≧ 特別条項の【月の時間外労働の上限値】
特別条項の【月の時間外労働の上限値】が、当月の許容時間になります。
ケース2:【年間の時間外労働の残時間数】 < 特別条項の【月の時間外労働の上限値】
【年間の時間外労働の残時間数】が、当月の許容時間になります。
「発動回数」の設定値に達している
例えば「発動回数:6回」と設定し、年間の特別条項の発動回数が6回の場合です。
一般条項の【月の時間外労働の上限値】を参照し、【年間の時間外労働の残時間数】と比較します。
ケース3:【年間の時間外労働の残時間数】 ≧ 一般条項の【月の時間外労働の上限値】
一般条項の【月の時間外労働の上限値】が、当月の許容時間になります。
ケース4:【年間の時間外労働の残時間数】 < 一般条項の【月の時間外労働の上限値】
【年間の時間外労働の残時間数】が、当月の許容時間になります。
直近2~6ヶ月の平均時間外労働(法定休日労働を含む)が多い場合は、ケース1~4で算出した許容時間ではなく、【当月の時間外労働の残時間数】を参照します(詳細はこちら)。
一般条項のみ設定している場合
「発動回数」の設定値に達している と同じ方法で算出します。
直近2~6ヶ月の平均時間外労働(法定休日労働を含む)が多い場合は、ケース1~4で算出した許容時間ではなく、【当月の時間外労働の残時間数】を参照します(詳細はこちら)。
直近2~6ヶ月の平均時間外労働(法定休日労働を含む)が多い場合
2~6ヶ月におけるひと月あたりの時間外労働(法定休日労働を含む)は、平均80時間以内である必要があります。直近2~6ヶ月の時間外労働や休日労働が多く、その結果【当月の時間外労働の残時間数】がケース1~4で算出した許容時間よりも少ない場合は、【当月の時間外労働の残時間数】を参照します。
ケース5:ケース1~4で算出した当月の許容時間 > 【当月の時間外労働の残時間数】
【当月の時間外労働の残時間数】が、当月の許容時間になります。
当月の時間外労働の残時間数
直近2~6ヶ月の時間外労働(法定休日労働を含む)を平均80時間以内に収めた場合の、当月の時間外労働の残業時間数です。以下の式で計算します。
◯ヶ月の時間外労働の残時間数 = ◯ヶ月 × 80時間 - 前月までの時間外労働合計(法定休日労働を含む)
例 月の初日において直近3ヶ月で計算する場合
当月の時間外労働の残時間数 = 3 × 80時間 - 2ヶ月分(前月まで)の時間外労働合計(法定休日労働を含む)
年間の許容時間の算出方法
年間の時間外労働の残時間数が、年間の許容時間になります。
許容時間の算出例
次の設定内容と労働状況の場合の、許容時間の算出例を説明します。
設定内容
メニューバー「環境設定」 > 「基準値設定」
項目名 | 説明 |
---|---|
分析基準月 | 4月 |
一般条項 | 1ヶ月:45時間 年間:360時間 |
特別条項 | 1ヶ月:100時間未満 年間:720時間 発動回数:6回 |
労働状況
勤怠レポート > 労働時間 > 時間外労働タブ > 個人別一覧 > 上限規制タブ >
- 時間外労働(法定休日労働を含む:OFF)
- 月間合計(法定休日労働を含む:ON)
項目名 | 説明 |
---|---|
時間外労働 | 該当月の時間外労働時間数(法定休日労働を含めない) |
法定休日労働 | 該当月の法定休日労働時間数 |
月間合計 | 時間外労働時間数 + 法定休日労働時間数 |
回数 | 特別条項の発動回数 |
参考:2~6ヶ月(当月含む)の平均「月間合計」とその最大値
上図の場合、2~6ヶ月(当月含む)の平均「月間合計」とその最大値は、次のようになります。
例 9月における6ヶ月(当月含む)の平均「月間合計」
(9月の月間合計 88時間 + 8月の月間合計 35時間 + 7月の月間合計 35時間 + 6月の月間合計 45時間 + 5月の月間合計 76時間 + 4月の月間合計 66時間) ÷ 6ヶ月 = 57.5時間 となります。
10月(月の初日時点)の当月の許容時間
1. 【月の時間外労働の上限値】と【年間の時間外労働の残時間数】との比較
一般条項と特別条項の両方を設定していて、特別条項の発動回数は3回です。このため特別条項の【月の時間外労働の上限値】を参照し、【年間の時間外労働の残時間数】と比較します。
- 【年間の時間外労働の残時間数】:415時間
年の時間外労働の上限時間数 720時間 - 法定休日労働を含まない時間外労働の合計 305時間(下図の赤枠の合計)
- 特別条項の【月の時間外労働の上限値】:100時間未満
⇒ケース1:【年間の時間外労働の残時間数】 ≧ 特別条項の【月の時間外労働の上限値】に該当し、【月の時間外労働の上限値】100時間未満(99時間59分) が、当月の許容時間になります。
2. 【当月の時間外労働の残時間数】との比較
直近2~6ヶ月の時間外労働(法定休日労働を含む)を平均80時間以内に収めた場合の【当月の時間外労働の残時間数】を、それぞれ算出します。
- 直近2ヶ月の時間外労働の残時間数:72時間
2ヶ月 × 80時間 = 160時間
160時間 - 9月の月間合計 88時間 = 72時間 - 直近3ヶ月の時間外労働の残時間数:117時間
3ヶ月 × 80時間 = 240時間
240時間 - (9月の月間合計 88時間 + 8月の月間合計 35時間) = 117時間 - 直近4ヶ月の時間外労働の残時間数:162時間
4ヶ月 × 80時間 = 320時間
320時間 - (9月の月間合計 88時間 + 8月の月間合計 35時間 + 7月の月間合計 35時間) = 162時間 - 直近5ヶ月の時間外労働の残時間数:197時間
5ヶ月 × 80時間 = 400時間
400時間 - (9月の月間合計 88時間 + 8月の月間合計 35時間 + 7月の月間合計 35時間 + 6月の月間合計 45時間) = 197時間 - 直近5ヶ月の時間外労働の残時間数:201時間
6ヶ月 × 80時間 = 480時間
480時間 - (9月の月間合計 88時間 + 8月の月間合計 35時間 + 7月の月間合計 35時間 + 6月の月間合計 45時間 + 5月の月間合計 76時間) = 201時間
⇒【当月の時間外労働の残時間数】の最小値は「直近2ヶ月の時間外労働の残時間数」の 72時間 です。
⇒ケース5:ケース1~4で算出した当月の許容時間 > 【当月の時間外労働の残時間数】に該当し、【当月の時間外労働の残時間数】72時間 が、当月の許容時間になります。
10月時点の年間の許容時間
年間の時間外労働の残時間数が、年間の許容時間になります。
年間の時間外労働の残時間数:415時間
年の時間外労働の上限時間数 720時間 - 法定休日労働を含まない時間外労働の合計 305時間(下図の赤枠の合計)
2月(月の初日時点)の当月の許容時間
1. 【月の時間外労働の上限値】と【年間の時間外労働の残時間数】との比較
一般条項と特別条項の両方を設定していて、特別条項の発動回数は6回です。このため一般条項の【月の時間外労働の上限値】を参照し、【年間の時間外労働の残時間数】と比較します。
- 【年間の時間外労働の残時間数】:155時間
年の時間外労働の上限時間数 720時間 - 法定休日労働を含まない時間外労働の合計 565時間(下図の赤枠の合計)
- 一般条項の【月の時間外労働の上限値】:45時間
⇒ケース3:【年間の時間外労働の残時間数】 ≧ 一般条項の【月の時間外労働の上限値】に該当し、一般条項の【月の時間外労働の上限値】45時間 が、当月の許容時間になります。
2. 【当月の時間外労働の残時間数】との比較
直近2~6ヶ月の時間外労働(法定休日労働を含む)を平均80時間以内に収めた場合の【当月の時間外労働の残時間数】を、それぞれ算出します。
- 直近2ヶ月の時間外労働の残時間数:90時間
2ヶ月 × 80時間 = 160時間
160時間 - 1月の月間合計 70時間 = 90時間 - 直近3ヶ月の時間外労働の残時間数:80時間
3ヶ月 × 80時間 = 240時間
240時間 - (1月の月間合計 70時間 + 12月の月間合計 90時間) = 80時間 - 直近4ヶ月の時間外労働の残時間数:115時間
4ヶ月 × 80時間 = 320時間
320時間 - (1月の月間合計 70時間 + 12月の月間合計 90時間 + 11月の月間合計 45時間) = 115時間 - 直近5ヶ月の時間外労働の残時間数:123時間
5ヶ月 × 80時間 = 400時間
400時間 - (1月の月間合計 70時間 + 12月の月間合計 90時間 + 11月の月間合計 45時間 + 10月の月間合計 72時間) = 123時間 - 直近5ヶ月の時間外労働の残時間数:115時間
6ヶ月 × 80時間 = 480時間
480時間 - (1月の月間合計 70時間 + 12月の月間合計 90時間 + 11月の月間合計 45時間 + 10月の月間合計 72時間 + 9月の月間合計 88時間) = 115時間
⇒【当月の時間外労働の残時間数】の最小値は「直近3ヶ月の時間外労働の残時間数」の 80時間 です。
⇒ケース5:ケース1~4で算出した当月の許容時間 > 【当月の時間外労働の残時間数】に該当しないため、一般条項の【月の時間外労働の上限値】45時間 が、当月の許容時間になります。
2月時点の年間の許容時間
年間の時間外労働の残時間数が、年間の許容時間になります。
年間の時間外労働の残時間数:155時間
…年の時間外労働の上限時間数 720時間 - 法定休日労働を含まない時間外労働の合計 565時間(下図の赤枠の合計)